傷跡を越えて:現代スキンケアにおけるCICAの再定義
「CICA(シカ)」という用語は、ラテン語で「傷跡」を意味する「Cicatrix(シカトリクス)」に由来しています。当初は、傷跡の治療に効果的な特定の成分や医薬品を指して使われていました。しかし、現代医学が進歩し、より強力で洗練された薬剤が創傷治療の主流となるにつれて、CICAの用法は変化しました。今日では、専門的な創傷治療薬というよりも、肌のコンディションを整え、健やかな状態を維持するための「化粧品成分」として 広く親しまれています。
CICAの代表的な成分である「ツボクサ(センテラアジアチカ)」は、エキスとして抽出されるほか、マデカッソシド、アシアチコシド、マデカシン酸、アシアチン酸といったトリテルペンサポニンを精密に単離して利用されます。これらの成分は、ダメージを受けた肌の修復をサポートします。さらに、ツボクサにはステロール、タンニン、フラボノイドに加え、リシンやアラニンなどのアミノ酸が含まれており、肌の再生において多角的な役割を果たします。
もう一つの代表的なCICA成分である「パンテノール」は、パントテン酸の前駆体です。パントテン酸は皮膚の健康維持に不可欠な物質であり、不足すると皮膚炎や炎症を引き起こすほど肌の状態と密接に関わっています。パンテノールは外部刺激から肌を保護し、再生を促す重要な役割を担いますが、興味深いことに、数多くの臨床試験でその有効性が立証されているにもかかわらず、皮膚内での詳細な作用メカニズムについては、未だ完全には解明されていません。